Interview

鋼材の耐久性を活かした屋外家具ブランド『highcollar』地方創生プロジェクト 丨 井口産業株式会社 様 インタビュー

井口産業株式会社
種別:鋼材
地域:千葉県浦安市
創業年:1946年5月

ソーシャルインテリアは、新品ブランド家具をサブスクリプションスキームで提供することから始まり、現在では「よいものを長く使う、循環社会の実現」をミッションとして掲げ、様々な切り口で空間の提案を行っています。

そのうちのひとつである地方創生プロジェクトは、日本全国で家具を循環させることを目的に、私たちが常に問い続ける「よいものとは?」「家具の循環とは?」の本質を、家具の利用を通して皆様に少しでも触れていただけるよう、家具ブランドの歴史背景と職人の仕事に迫ります。

この度は、弊社でお取り扱いしているガーデンファニチャーブランド『highcollar(ハイカラー)』を立ち上げた井口産業株式会社 立体製作所事業部 井口 隆一郎 様 にインタビューさせていただきました。

ブランドページ:https://subsclife.com/list/br-200042

井口産業株式会社 立体製作所事業部 井口 隆一郎 様

浦安といえば、日本一の鉄の流通基地のあるところ

井口産業株式会社は、世界でも類を見ない規模の鋼材流通基地である浦安鉄鋼団地内にある一般鋼材専門商社です。戦後の昭和21年(1946年)5月に鋼材屋さんが多く集まる本所立川で創業しました。

しかし、高度経済成長期において、交通事情を改善するため、都内で大型トラックの規制が行われました。規制により移転を迫られた都内の鋼材流通業者は、埋立事業により新たな土地が造成されることとなった千葉県浦安市を選び引っ越してきたところから、この鉄鋼流通基地ができました。

昭和43年(1968年)に第1号の会社が進出して以来、鉄鋼通りと港に浦安鉄鋼団地が形成されていきました。今となっては、浦安市は日本有数の鉄鋼の街として知られ、地域との共生を図りながら、日々進化を遂げている地場産業となっています。

スチールの総合企業から誕生したブランド『highcollar(ハイカラー)』

屋外向けの家具である『highcollar(ハイカラー)』は、井口産業株式会社の一部門である立体製作所事業部のブランドになります。

弊社の扱い品種は多岐にわたり、鉄鋼団地という立地を最大限に生かし可能な限りの材料と加工を届けています。鋼材店の加工は二次加工までが一般的でありますが、時世を反映し3次加工に乗りだす会社も増えてきました。

そんな中で、井口産業では三次元パイプベンダーという特殊なパイプ曲げ加工を始めたことを皮切りに、自社の幅広い扱い品種と知識を建築金物・店舗什器・家具・アートワーク等の製作に向け始め、最終製品を作るに至ったモノが『highcollar』というブランドの形です。

特注品は出来上がったときの達成感はあるのですが、気が付かないけど自分たちには納得行かないということが多々あり、気が抜けません。また、特注品の軸となる内装業には閑散期があるため、作り置きできるブランドを作りたかったという背景もあります。

屋外で空間に親しむ時間を作ってほしいという想いから

『highcollar』の意味は、西洋風の身なりや生活様式を指す「ハイカラ」が語源です。日本では西洋文化のはじまりというイメージがあるのですが、更に時が経って、日本の中でガラパゴス化したものをまた西洋に戻せたらいいな、というニュアンスも含めて名付けました。

“人々が屋外で語らい集い、空間に親しむ時間を作ってほしい”との想いから、人の心を惹き寄せるフォルム、居心地・機能性を両立させたデザイン、安全で頑丈なつくりが製品の特長です。

製品は、ゆったりとした座り心地の「POOL」、部屋の縁やコーナーにぴったりと収まる直線的なラインで構成された「TERRACE」、2枚の板材をコンパスのように開閉できる「CASCADE」のベンチ&テーブル、3シリーズで構成されています。

スペースや用途に合わせて組み合わせられるよう、サイズ別にラインナップされ、屋外での長時間利用を考慮して防錆効果のあるメッキ+塗装仕上げで耐候性を持たせています。

家具を長く使ってもらうために必要なこと

モノづくりの基本にしているのは長く使えるものを作るということです。フォルム・剛性・使いやすさ・ブランディング等が上手く利用者に作用する事が長く使って貰えるモノにつながると考えています。”いいモノ”という意識づけだけではなく、気に入ってもらうためのブランディングも大事な要素となります。

弊社で素材の特性と構造や技術を丁寧に読み解くことで製造を担い、クリエイティブディレクションとプロダクトデザインを「DRILL DESIGN」さんに担当してもらうことで、新しいオープンエア・ファニチャーを完成させました。

身近にいる知人友人は、堅いというか強いイメージのデザインをされる方が多い中で、少し丸くて優しいイメージがあったDRILL DESIGNのおふたりが今回のプロジェクトには必要でした。

モノづくりとしては鋼材店ですので、金物製作を主業とし製品を作るにあたって必要な他素材加工などに関しては、信頼できるパートナー業者と共に、与えられた範囲の中で最善を模索しています。

使っていただいている間のメンテナンスももちろん可能です。メッキして塗装しているのですが、塗装は3回まで上塗りできます。また、木は10年ほどで交換が必要となりますが、金物は腐ってしまわない限り、20〜30年は持つと思います。

地場産業は、辞めずに続けることに意義がある

街なかに設置している製品の写真を送っていただくことがあるのですが、前後ろいろいろな方向から座っていたり、軽く寄りかかっていたり、いろんな使い方をしている人を見るとおもしろいなと思います。

現在の取り組みで重要視していることは、とにかく辞めずに続けること。そのためには、若い人も欲しいです。金物製造業者が激減している昨今なので、若手の育成を考えています。
また近々に新製品も出せればいいなと思っているので、もっと営業力をつけて、広めていきたいです。

井口産業株式会社について

我が社は鋼材卸業として50年以上の歴史を持ち、現在は鋼材流通業としてユーザー志向を強めております。千葉・埼玉・茨城を主力営業エリアとし、浦安鐵鋼団地という立地をフルに活用する事で小口即納体制を確立、ユーザーニーズに答えてあらゆる材料加工も請け負い致します。

会社HP:http://www.iguchi-steel.co.jp

highcollarについて

highcollarは「ハイカラ」の語源で、その昔に西洋で学んだ人々が高襟のシャツを好んで着たことから始まったそうです。
私たちにとっては日常となった西洋文化は日本独自の進化を遂げました。
その進化を目に見える形で表現して行けたらと思っています。

ブランドロゴブランドHP:https://highcollar.tokyo/

編集後記

まんが「浦安鉄筋家族」のモデル地域が存在するということはなんとなく知っていましたが、実際の浦安鉄鋼団地には初めて降り立ちました。舞浜駅から向かったのでテーマパークを通り過ぎた後のギャップには少し驚きましたが、おもしろい地域性にだんだんわくわくしてきました!

そういった地域性の細かい話からお伺いしていたので、職人さんな雰囲気の井口さんでしたが、ブランドの話になると、完全にデザイン畑の人でした。技術に加えて、絶対的なセンスと知識が加わったことで、ブランドの世界観がしっかりとしたhighcollarが生まれたのだと納得しました。
highcollarのグラフィックは鉄鋼のまっすぐなイメージと、楽しむ家具であるポップなカラーイメージで魅力的です。私ももっといろいろな人に届けたいと思います。
この度はお忙しいところありがとうございました!