AKIO NAGASAWA Gallery 代表 長澤 章生 ✕ 株式会社ソーシャルインテリア 代表取締役 町野 健
同じ部屋に置かれるのに、なぜアートとインテリアは離れているのか?
なぜ、インテリアとアートは同じ部屋のその人を表すものなんだろうか?と疑問を持っていた町野が、アートはどんどんギャラリーだけにこだわらずに家や店に入っていったほうがいいというAKIO NAGASAWA Galleryの長澤さんにお話を伺います。
INDEX
それぞれ別の仕事の仕方。融合していない現在
なぜか、壁には何もない方がいいという考え方もあって
アートも見てもらう機会を自らつくりださないと
それぞれ別の仕事の仕方。融合していない現在
それぞれ別の仕事の仕方。融合していない現在
- 町野
- そもそも部屋はそこで暮らす人のセンスやスタイルに合わせて総合的にデザインしていくのがいいはずなんですけど、家具は家具だし、内装工事は内装だし、アートはまた別ものと、部分部分なんですよね。
- 長澤
- 家具もインテリアも専門知識が必要でそれを掘り下げている方からすると、現状アートっていうのは最後に壁の装飾をちょっとやるおまけのものという感じになっているのかなと感じます。インテリア領域の方は、当然アートに対する専門知識はなかったりするので、この壁のスペースあいてるから何か飾るか。内容ではなく、色合いのバランスぐらいで選ばれているのが現状でしょうかね。
インテリアの中のアートをキュレーションをするという人を育てるっていうのが急務なのかもですね。
- 町野
- 今は最初に建築、そのあと内装、そしてインテリア、最後に壁になんか飾るかなという順ですかね。
- 長澤
- 最初の段階からアートも融合していくために取り組みたいですね。アートはその人の生き方や存在証明なんですよ。
なぜか、壁には何もない方がいいという考え方もあって
なぜか、壁には何もない方がいいという考え方もあって
- 長澤
- 町野さんの会社にはオフィス構築の仕事もかなりきてると聞いたんですけど、オフィスではどんな感じですか?
- 町野
- 基本的には、こちらから提案しない限りは、アートを飾るという発想がでてこないですね。
- 長澤
- 何か日本だと、壁に何もない方がすっきりしていいっていうような価値観がちょっとありますね。美学として日本だと引き算だというような。ヨーロッパは、足していく。足してデザインしていく。デコラティブの歴史なんで。
引き算の良さもあるし、足し算のかっこよさもある。その足し算のかっこよさを知っていただきたいですよね。
オフィスでも、その空間をどう演出するかっていうときにアートってすごくね、大きい影響力がある。それは写真一枚あるだけで絵があるだけで空間の世界観がばっと変わるんです。施主さんがその空間をどう演出したいのか?、緊張感を持たせたいのか?、柔らかいリラックスした空間を作りたいのか?、だったらこういうアートを選ぼうってやってみると空気感から変わるんですよ。
- 町野
- そういう概念さえない人にどうやってもってもらうか?はどう思いますか?
- 長澤
- 私は、アートって体感することが一番だと思うんです。ある美容室のオーナーがアートが気になると。そのお店を直接見てオーナーのセンスを感じて、勝手に持っていって飾ったんですよ、私が見繕って。
そうしたら、そこから会話が生まれる、雰囲気が変わると。数週間経って外しにいったら、なくなったら寂しいムードになるからそのままにしてくれと。
私が思うのは、アートも素敵な家具も体感してもらうようにしないとやはりダメ。
金額を均等に配分するというやり方が…
- 長澤
- とある高級住宅街に新築の家を依頼された建築家から、家ができたのでアートの相談がしたいと現地に行ったんですね。広い家でね。地下一階地上四階で。アートの総予算が2000万円で、玄関には数十万円のを、リビングには200万円ぐらいのを、ダイニングには100万円ぐらいのを、廊下は長いので10万円20万円のを10枚ぐらいでどうですか?と、その建築家がいうわけです。
- 町野
- その方って、なかなか著名な建築家の方ですよね?
- 長澤
- そうです。その建築家にとっては、予算を均等配分して、壁のあいたスペースを埋める作業でしかない。
そこで私は言ったんです。施主さんが「これぞ!この新築のリビングにこそ飾りたい!」という一作品2000万円のものがあるかをまずいくつか候補の作品を見てもらいましょうと。
- 町野
- 壁装飾作業ではなくて、これぞ我が新居だという象徴ですね!
- 長澤
- そういうことなんです!もちろん家やインテリアにマッチしているのも大事ですけど。
- 町野
- 家と家具で数億かけて、最後に飾るものがしょぼいっていうのはありますよね。
- 長澤
- これもある大手の住宅メーカーの住宅展示場での話なんですけど。
その住宅メーカーは注文住宅でかなり高いクラスのもので、展示場の家も立派だし家具も高いものが置かれている。
それでびっくりしたのが…
- 町野
- びっくり???
- 長澤
- 壁にかけてあったり棚に飾ってあるアートが市販のポストカードの額装したものなんですよ。そこだけすごく安っぽい。こういうことって、何年も熟成した希少なワインを紙コップに入れて飲むぐらいミスマッチなんですよ。
その住宅であれば、きっとモノクロ写真のあの作家の代表作のクールなものを飾ればすごく雰囲気が引き締まるのになあと勝手に想像してました。
アートも見てもらう機会を自らつくりださないと
アートも見てもらう機会を自らつくりださないと
- 長澤
- これは私たちのようなギャラリーの反省でもあるんですけど。どうやらギャラリーへ足を運ぶというのは敷居が高いんですよね。
だから私は、こちらから見ていただく機会を積極的につくろうと。今年(2024年)は、あるラグジュアリーホテルのプレミアムサロンに写真を置いてもらってかっこいい空間を演出して、見てもらう体感をしてもらう機会をつくったりしています。
- 町野
- インテリアも同じで、体感してもらわないとわからないんですよね。
だから「THE MUSEUM」をつくって体感してもらおうと。久々能智さんにも相談して、長澤さんとぜひここのインテリアにあうアートの展覧会をやりましょうとなりましたね。
いいものに触れていることが、その人の雰囲気をつくる
- 長澤
- 家の中で、その人が本当に気に入っていてカッコよくて惚れ込んだ椅子に座っている。数十万円するけど、惚れ込んだ椅子に座っているとかはその人がまとう雰囲気をつくります。
- 町野
- 高くても惚れ込んだものが手に入れられるように、サブスクとかで手にする機会を増やしたいです。
- 長澤
- アートにしても高いものを選ばなくてはいけないわけではなく、身の丈にあったものでいいと思う。自分のセンスで磨かれ家にあって誇りを持てるようなものをもっていれば、その雰囲気をまとうことになります。外に出てもその人の雰囲気って生活や住む環境から出ちゃうんですよ。誰も見ていない家の中でさえ、とりあえずの数百円の折りたたみ椅子に座るのと、座る人の生き方や感性にあったアーティストや職人がつくったいい椅子に座るのでは、座った時の表情から自信の持ち方まで変わってくるんですよ。外に出たときにどういう空間やどういうものに触れているかが、その人の雰囲気に出ると思うんです。
インテリアの提案にアートを融合していきたい
- 町野
- これを機にアートをインテリアの提案に含めていきたいんです。
オフィス構築でも個人様でも、最初の段階からインテリアとアートを合わせて提案していけるようにします。
- 長澤
- 私のギャラリーで所蔵している様々な作品の提供はもちろんですし、何より作家や作品ごとの背景やどんな意味のある作品かも社員の方にご説明しますので。
- 町野
- アートとインテリアの融合で、ぐっと文化度と雰囲気を高められるように一緒にチャレンジさせてください!
- 長澤
- お客様の生活が素敵により良くなるようにご協力させてもらいます!
長澤 章生
ながさわ あきお
AKIO NAGASAWA Gallery / Publishing 代表
AKIO NAGASAWA Gallery / Publishing は、作家の活動に対してギャラリーが触媒となり、共に新しい作品を生みだし、その作家の活動歴、ひいては芸術の歴史に参画したい考えを指針とし、主に日本の戦後作家を、展覧会の開催と作品集の出版を通じて国内外へ紹介する活動を行う。 銀座・青山・虎ノ門と三つのスペースで活動をしており、それぞれの場所性を念頭に、そこに集う人々の属性も考慮したプログラムを組んでいる。